姿勢、呼吸、感情起伏を改善する「丹田」の具体的構築法

へその下から8センチ下、さらに8センチ体の奥に当たる空間です。具体的に体にそのような名前のついた部位があるわけではなく、あくまでそのあたりをぼんやりさしたものです。

上記の空間は体の中で最も血液循環が激しい部位です。ある武道の書籍では、全体の血液循環量の20パーセントが丹田周りで締めているともいわれます。そのため、呼吸の方法を変えて丹田周りの筋肉を働かせることで、全身の血の巡りをよくすることができます。

禅の世界では「丹田呼吸法」やその他武道での呼吸も丹田を意識させる呼吸を取り入れています。ヨガの世界では、グンバイと呼ばれる呼吸があります。これは、腹周りの内臓を意識的に動かし、身体の神経、内臓の機能を調整する呼吸法です。

ある剣術の達人は、常におなかに体重がしっかり乗った姿勢を日常化させたことで、切腹する前夜になっても普段通りに過ごしていたといわれています。このように、常におなか周りに体重が乗り、丹田周りに筋肉や意識が働いていると、上半身全体がリラックスし、呼吸も整います。その結果、動き出しが速く、身のこなしも変わってきます。

このように、下っ腹への意識や筋肉の働きは、姿勢に大きく関わります。そして、最も体に負担のない姿勢は丹田に自然に意識が行っている姿勢と言えます。

丹田へ意識を向けることによるさらなる利点

普段の生活で重心が下に落ち、丹田周りに体重の乗った姿勢を取ることによる利点は他にもあります。それは、心が安定することです。

人間には、緊張時に働く交感神経と安静時に働く副交感神経の二つの神経が背骨を介して通っています。これらの神経は、お互いがバランスを取って働いています。しかし、姿勢が悪くなり、背骨の神経に圧迫やつまりが生じると、これらの神経の働きに影響が出てしまいます。

例えば、腰をそらせ、 胸の張った姿勢を取ると、背骨が湾曲してしまい、神経に詰まりを起こします。すると、全身の血液の巡りが悪くなってしまい、交感神経、副交感神経の働きがバランスよく働くことができず、緊張しやすくなります。実際に胸を意識的に張った姿勢を取ると、呼吸が浅くなり、肩が緊張しやすくなります。これを、武道の世界では「心気下方に通ぜず」とも表現されます。

しかし、腰の反りがなく、腰部、胸部、頸椎に必要以上の湾曲がなければどうでしょうか。頭部から腰にかけて生えている背骨の神経が圧迫がないため、血流に阻害なく姿勢を保てます。各内臓や全身の筋肉にきちんと栄養分や血液が流れる姿勢が取れるため、気持ちは落ち着いた状態になります。

腰が立つことによって、骨盤が地面とほぼ垂直(厳密には少しだけ骨盤が前掲する)に立ちます。これによって、その上に乗る小腸、横隔膜が適切な位置に収まります。加えて、消化器官である胃袋が横隔膜の上にしっかり乗ります。

このように、小腸、横隔膜、胃袋が骨盤の上部にどんと乗った姿勢を「丹田に重みが乗る姿勢」とも表現されます。

通常、緊張したり、だるい状態では、小腸が骨盤の上に正しく乗らない状態になっています。もし、小腸、横隔膜が骨盤にきちんとのらなければ、それにつながる神経や筋肉に圧迫や無理がかかります。すると、血液の循環や栄養分の運搬がうまく行われず、内臓器官の機能低下につながります。

例えば、横隔膜が機能低下すると、上下運動が行われなくなり、体内に取り込める呼吸の量が少なくなります。小腸に血液が行かなくなれば、栄養分の吸収効率が低下します。こうして内臓機能が低下し、呼吸量と栄養分の吸収量が低下すると、「不安感」「疲れ」「だるさ」といった身体的症状に悩まされます。

胃袋でも同様のことがいえます。丹田に体重が乗っていない姿勢(腰が反ったり、屈んだりする)になると、胃袋が活発に働かなくなります。胃袋、小腸は蠕動運動(ぜんどううんどう)と呼ばれる上下に動く運動形態をとります。もし、胸郭の位置や背骨の位置が定まなければ、胃袋、小腸の上がり下がりすることができなくなるため、消化不良になります。

したがって、イライラしたり落ち着かなくなります。丹田に意識や体重が乗らない姿勢は筋肉の凝りだけでなく、心の不調を発生させることにつながります。つまり、丹田に重みの乗った姿勢を構築することで、姿勢改善だけでなく、呼吸量、栄養吸収量、消化量、心身の改善までできると理解してください。

武道で言われる適切な姿勢の状態

武道の世界では上半身には余計な捉われのなく、下半身が充実した姿勢が心身ともに成長や健康によいとされています。これを「上虚下実」と言います。

普段の稽古に下半身にしっかり重心の乗った姿勢で様々な動きや技を行います。このような姿勢を腰が立つと書いて「立腰(りつよう)」とも言われます。

しかし、今の人たちは仕事や人間関係で頭を使うことが多いため重心が上半身に行きがちです。特には「頭」に意識や力が働いています。頭ばかり使い続けると、ボーっとして思考停止に陥りますが、姿勢から考えても体が疲れやすい、不調を起こしやすいといった欠が出てきます。

武道の世界では、丹田と呼ばれる体の空間があり、負担のない姿勢を取るときに重要です。そして、丹田へ意識が行く姿勢は筋肉だけでなく、心の健康にもつながります。

「丹田」が最も働く姿勢の取り方

そこで、ここでは丹田に意識、重みが乗る姿勢の構築法について解説していきます。丹田に自然に体重が乗る姿勢は武道の書籍より、以下に紹介されます。

弓道書籍、心月謝儀より参考
・背骨の湾曲がないこと
・下腹部の硬直がないこと
・左右の肩が傾いたりしないこと

このように、背骨に余計な湾曲を作らず、下腹部に余計な力みのない姿勢を作らなければいけません。先ほど述べたように、本質的に姿勢を変えるためには、背骨に余計な湾曲を作って、神経や血液の流れに詰まりを作ってはいけません。さらに、下腹部を余計に力ませてしまうと、背骨全体が猫背にように曲がってしまうため、気をつけなければいけません。

まず、全身の筋肉の無駄な緊張をとります。そのために、首を伸ばして両肩を落とすようにしましょう。やせ型の人は胸が前に出やすいので、みぞおち部分を少し体の中にいれるようにします。太っている人は頭が前方に出やすいため、眼球を体の中に入れる心もちで頭を後方にずらしましょう。

すると、上半身の力みや緊張がとれます。人の全体重は上半身が60%を占めているといわれています。その体重を頭の頂点から丹田周り(だいたい腰周り)に集中させるようにしましょう。これにより、丹田を働かせるための姿勢が整います。

両肩を落とすことで、胸周りがスッキリして体がほぐれるのがわかります。また、少し体重が軽くなった感覚にもなるでしょう。

イメージとしては、最初に地球上の重力が私たちにかかっています。それに逆らわないでいると頭が縮み、姿勢は負けてしまいます。そこで、首を伸ばします。すると、首の後ろ側、背中の筋肉が働き、重力の反対の上方向に伸びる力が働きます。

このように、二つが合わさって、結果的に丹田回りに力や重心がまとまります。自ら首を伸ばすことで自然の力と合わせて丹田を働かせます。

丹田姿勢構築の際の注意点

ひとつ注意点があります。それは、丹田は体の別の部位を動かすことで使われます。上記のように丹田に意識を集める方法は首と肩を使います。そのため、決して自分で丹田に意識を集めたり、圧迫させたりしてはいけません。

もし、そのように、丹田を意識すると、お腹を固くしてしまうからです。例えば、あるスポーツの書籍では、武道の丹田の運動動作に取り上げて、下腹を意識するようにと指導します。しかし、自分から丹田を意識すると、下腹部が硬直してしまい、血流の阻害や筋肉の緊張を起こします。そのため、スポーツ動作にはむしろ害を与えます。

下手に丹田を意識すると気持ちが落ち着かないばかりか、後で体が力んできて、姿勢が崩れることにつながいrます。そのため、丹田とは「自分で力を入れる場所」ではなく、「上半身の体重が最終的に集中する場所」と捉えてください。

適切な姿勢を保持するために、首と肩を使って「丹田」の働く姿勢を取りましょう。体と心の緊張がとれて、日常生活に良い効果をもたらします。

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