簡単に座り作業での姿勢と緊張を改善する方法

年齢を重ねると、体の不調を患いやすくなります。その中で、パソコンを使った作業の多い人は、正しい姿勢を崩してしまいがちです。そうして、骨盤の角度がずれ、胸郭、頭部の位置がずれることで、身体の血流が悪くなり、不調や痛みが伴います。

そのため、正しい姿勢を身につけて、体に負担のない状態を保ち続けることは大切です。ただ、大部分の人は姿勢を直そうとしてもなかなか維持することができません。なぜなら、仕事に集中していると、正しい姿勢がおろそかになってしまい、元の悪い姿勢にもどってしまいます。

つまり、姿勢を改善することは、非常に難しいといえます。そのため、難しいことにとらわれず、最初は簡単なところから矯正を始めることをオススメします。

さらに、武道の観点では、簡単に姿勢全体を改善し、筋肉の力みを取り去る手法があることがわかります。もし、あなたが普段、肩凝り、腰痛に悩まれている場合、まずは姿勢改善から行うことをオススメします。そして、身体の力みを取り去って、自身の座り姿勢や無駄な緊張を変えるようにしましょう。

そこで、今回はデスクワーク中心で、姿勢矯正について何も知らない人であっても、すぐにできる姿勢を改善するための矯正法について解説していきます。

「視界」を変える

正しい姿勢に矯正しようとしても、どうしても体が疲れてしまって元の楽な姿勢に戻ってしまいます。骨盤を立てようとしたり、胸を前に開くような姿勢を取るとかえって力が入り、悪い姿勢を招く結果になります。

そのような場合は、最初は、骨盤や背骨の位置に気にせず。、「目線」「視界」だけを変えて座り仕事をしてみましょう。このような小さい部分を改善することで、作業中の姿勢を改善することができます。

目線は少し上げるように仕事をします。目線を上げると自然と頭が上がります。頭部の位置が少し高くなるだけでも、首や肩にかかる負担が軽減されます。そのため、最初は少し顎が上がっても良いので目線を上げるようにしましょう。

少し目線を上げて作業中は、PCの上っ面を見ましょう。すると、自然と頭が上がります。そこから、頭は下げずに目線だけ下に移すようにします。上から下に画面をのぞき込むようなイメージでPCを見ると、頭の位置を維持することができます。

できれば、手元もあまり見ないようにしましょう。作業しているときに、手元に目線が言ってしまうと頭が下に下がります。手元はボンヤリ視界に入っているくらいにしましょう。この目線と視界で作業が慣れれば、長時間の坐り作業でも疲れにくくなります。

文字入力が慣れている人の場合、ある程度のキーボードの位置はわかるはずです。ブラインドタッチができれば理想ですが、私的にはそこまで極めなくてもよいと思います。最初はチラチラ手先を見て、手元を見ないことに少しずつ慣れていきましょう。

目線が上がると呼吸動作がしやすくなる

さらに、目線が上がることで他の効用があります。それは、目線が上がると呼吸がしやすくなることです。

人の頭部の内部には、蝶形骨と呼ばれる骨があります。人の頭を断面図から考えると、内部に蝶の形をした骨があるといわれています。この骨は深い呼吸ができているときは、周りの筋肉が何も干渉なく、蝶形骨の隙間を通って酸素が入ります。しかし、眼、耳、鼻、口にある筋肉が緊張したり固化すると、蝶形骨周りにある「酸素の通り道」がなくなってしまいます。

その結果、浅い呼吸しかできなくなり、身体に必要な栄養素を必要量届けることができません。現代人の場合、仕事によるストレスや仕事による負荷がかかるため、一層酸素不足に陥りやすいです。身体の緊張を取り去るためには、酸素を取り込みやすい状態を作ることが大切です。そのためには、少し目線を上げるようにしましょう。

目線を上げると、体の緊張がとれる理由

また、目線を少し上げると、体の緊張がとれる理由についてもう一つあります。それは、目線を上げると「手元」が気にならなくなるからです。

人は、目線を上げ、手元に集中して作業を行うときは「細かい」作業を行うときです。しかし、それは、遅く、時間をかけて作業を行うものです。デスクワークをする場合は、スピーディに指先を動かして、速く作業を行います。その際に、あまり手元を見ないようにすることで、指先で作業する能率は各段にあがります。

その理由として、指先に集中すると、姿勢が崩れるからです。「指」にずっと目線を移していると、肩が前に出やすくなり、頭部全体が前に出やすくなります。すると、鎖骨から腕にかけて伸びている筋肉が圧迫されてしまうので、腕や指に力みが出ます。そのため、指先の筋肉に余計な凝りを作らない上でも、「目線を上げる」ことは大切です。

最初は猫背の状態から少しだけ頭を持ち上げるようなイメージで作業をします。つまり、最初は背中や骨盤といった大きな部位はあまり意識しないようにしましょう。背中や骨盤の形を変えるのには大きな力を要するかもしれませんが、視界を変えることにエネルギーはそこまでいりません。さらに、全体の姿勢は着実に変わっていきます。

このように、大部分の人は姿勢を変えようとしても、力が抜けて、元の悪い姿勢に戻ってしまいます。そこで、普段の作業で視界を変えるようにしましょう。小さな動きが体全体に影響を与えて、姿勢を大きく変えることができます。

わからない人は「肩の位置」を変えよう

正しい姿勢をなかなか維持できない人は、いきなり理想の姿勢を保とうと頑張ってしまいます。これでは、最初のハードルが高すぎてなかなかクリアすることができません。英語を話すために英単語を覚えるように、まずは簡単な部分から姿勢を変えるようにしましょう。

そこで、意識しやすいのが「肩」です。普段、PCを見る機会が多い人は、肩が無意識に上がった姿勢になりやすいです。この理由は、PC作業は指先を多く使うからです。

指先に力を入れると、その力みが腕を介して肩まで伝わります。長時間指を酷使するため、肩が自然と上がっていきます。肩が上がると、肩回りの筋肉が固くなってしまうため、肩こりを招く可能性があります。さらに、緊張が伝わって首や腰も凝りや不調を招く結果となります。

良い姿勢を保つためには、肩を上げないように意識します。つまり、座っている最中「肩を下げる」ことを心がけます。作業している途中に、自分の肩に力が入っているかどうかを機を配りながら作業をします。そして、上がってきたら意識的に下げるようにしましょう。

肩を下げることは姿勢だけでなく、保険の観点からも重要です。なぜなら、肩を下げると自然と胸周りの筋肉も下に落ちるからです。

肩を落とすと、胸周りの筋肉が自然と落ちます。これによって、胸が前方に突出することがなくなり、胸郭(きょうかく)が自然と腰の中央付近に落ちるようになります。すると、胸郭がずんと横隔膜の上に乗ります。

この姿勢は武道の世界では「胸落」と言われ、剣豪宮本武蔵もとっていた姿勢と言われています。横隔膜の上に胸郭が適切に乗ることで、胃袋といった内臓器官の負担をなくすことができます。

人の姿勢は前屈みになると、胃袋、肝臓が前に行きすぎてしまい、胸郭によって圧迫されます。あるいは、頭や肩などが仕事やストレスによって緊張してしまうと、同時に胸の筋肉が緊張してしまいます。すると、その内部につく胃袋や肝臓につながる神経を圧迫するため、内臓の活動に影響を与えます。そこで、肩を落とし続けることで、体に負担のなくすようにできます。

肩を下げると、運動技術が高まる

さらに、肩を下げると、運動技術が向上することも武道の世界でわかっています。

実は、手元に見ないように作業することは、スポーツや武道の世界でも重要な考え方です。理由は、手元を見ると、手先で持っている道具を操作しようとしてしまうからです。剣術なら、剣に、弓道であれば弓矢の操作に捉われて、体全体を使ったパフォーマンスを発揮することはできません。

私自身、弓道の世界で一般人の約二倍の強さの弓を引くことができます。このように、体に負担なく弓を引きこなせるようになったキッカケは「目線」でした。武道の世界では、目線を少し変えることで、首周りの筋肉、横隔膜匀、腸腰筋などの姿勢に関わる筋肉がゆるめられることがわかっています。少し、普段の目線の使い方を変えたことにより、弓の反動力に負けない姿勢を構築できました。

私は弓道を人に指導する機会があります。そのときに、「上半身の姿勢を整え方はどのように行えばよいのでしょうか?」という質問を受けます。このときの回答で「わからない場合は両肩を落とすことだけ意識すれば問題ありません」と答えることがあります。

実際に弓道の世界では両肩を落とすことは座るとき、立つとき、歩くとき、あらゆる動作で重要です。両肩が落ちることで姿勢を真っ直ぐに保持しやすいからです。肩を落とし、上半身の力を抜けるようになれば、背中や骨盤といった体の中で比較的大きい部位の向きや形を修正しやすくなります。

さらに、肩を下げるときは、なるべく呼吸に気を配るようにしましょう。呼吸をするときは吐く息を長めにします。両肩を下げて、胸から上の筋肉がゆるんだ感覚を得ることができれば、呼吸が楽に長く吐くことができるでしょう。

背中を真っ直ぐにしたり骨盤を立てたりすることは、筋肉がもともとできない人にやらせるのは非常に困難です。それに比べて両肩を落とす作業はどのような人でも簡単に行うことができます。さらに、効果がすぐに実感できて、維持しやすい動きです。

そこで、普段の姿勢では、「目線を上げる」「肩を落とす」ことを意識するようにしましょう。上半身の負担のない姿勢が身に付き、良い姿勢に近づけることができます。

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