体の負担をなくすことは、不調改善につなげるために大切なことです。現代人が抱える腰、肩、膝の痛みは姿勢が崩れ、それらの部位の筋肉に負担がかかりすぎることから起こります。楽な姿勢をとるためには体の部位を一つひとつ分析し、姿勢を勉強する必要があります。
例えば、立っているときには脚の筋肉を働かせます。大部分の人は、姿勢改善と言われると、「背骨」をイメージします。または、「頭部」をみるかもしれません。しかし、上半身の姿勢を正すために大切なことは「下半身の骨格」を正すことです。膝下、太ももの骨の位置がそろうことで、結果として上半身の姿勢を改善することができます。
立っているときに疲れにくく、長く立ち続けるためには脚の適した骨格構造を理解する必要があります。そして、骨格を正すことは、誰でも実践できます。
ここでは、武道の体の使い方から、立ったときに有効な脚の筋肉の使い方を解説していきます。
1 姿勢を改善するためにほんの少し膝を曲げる
1-2 スポーツの世界でも重要な膝が曲がった姿勢
2 膝を少し曲げただけの注意点
2-1 ダンサー、バレェの人は膝関節のゆるみが大切
姿勢を改善するためにほんの少し膝を曲げる
例えば、肩・肘・手首の三部位をまっすぐに伸ばした状態で黒板のチョークを握っているとします。黒板に直線をかくとすると、書きにくく、短い線しか書けないことは誰でもわかります。腕が伸びきった状態では力をうまく筋肉を働かせることができないからです。
そこで、肘を少し曲げておくと書きやすく、長い線を書くことができます。なぜなら、肘が曲がっているからです。肘が曲がっているので余計な力みがなくなります。さらに、肘を伸ばすこと、さらに直線を伸ばせる余力もあります。
これと同じことが脚でも言えます。脚を動かしたり、立たせるときは各関節の屈曲を観察する必要があります。まず、前に屈んで腰を折ります。そこから腰の背骨を一つ一つ乗せるように持ち上げるようにして、背中を真っ直ぐ立てます。そこから、両肩を軽く落としましましょう、
すると、足裏全体がピタッと止まります。このときに膝の裏側を見てみると自然と伸び、少しだけ曲がった形になります。このように、上半身の体重を腰に乗せると軽く曲げていた膝が少し伸びます。結果として脚の膝関節がほんの少し曲がった姿勢になります。
この状態で立っていると腰が軽く感じます。このように、脚筋をピンと張らず、余裕を残した状態にして立つことで、「骨盤を垂直に立てやすい」「脚に負担が少ない」といったメリットがあります。太ももの裏側の筋肉を触っているとピンと伸ばしているときと比べて少し筋肉がゆるむのがわかります。無駄な力みがなくなるため、上半身の筋肉もリラックスした状態で立つことができます。
都内で電車を使って通勤している人の場合、長時間立っていて疲れてしまう場合があります。そのようなときは、足裏全体に体重を乗せるようにし、膝を少しだけ曲げておきましょう。足裏の重心はつま先や踵に寄りすぎず、あくまで中央に乗せるようにします。すると、脚が楽になって立っていても疲れにくくなります。
スポーツの世界でも重要な膝が軽く曲がった姿勢
さらに、この姿勢はあらゆるスポーツにおいても、有効性が確認されています。
例えば、野球の世界では、最初の構えでつま先や踵に体重が乗らないように、足裏全体に乗せるようにします。そして、軽く膝を曲げて、骨盤を立てるようにします。通算本塁打数が多い打者ほど、骨盤を軽く曲げて立っているフォームであることがよくわかります。
その理由は、バットスイングにおいて大切なことは、「背骨を軸にした回転運動」を阻害しないことだからです。
スイング動作を物理的に見ると、腕、バットという物体が背骨を軸に回転する運動ともとらえられます。これを物理学では「慣性モーメント」ともいいます。野球において、スイングスピードを早くするためには、いかに回転運動を阻害させないかにかかっています。そのため、骨盤をなるべく垂直に立てる必要があります。
もし、骨盤を不用意に前や後ろに傾けると、背骨を軸にした回転運動がうまく行われなくなり、バットのスイング軌道が不安定になったり、筋力の割にスイングスピードが加速しないといったデメリットがあります。近年は、スポーツ科学を元に、股関節や体幹部をねじることが重要視されています。しかし、姿勢や筋肉の観点から話すと、これらの動作がスイング動作では無駄になってしまう可能性があります。
他に、ランニングの世界でも同様に、「膝を軽く曲げる」重要性があります。日本、海外のトップランナーの走り方を見ると、ほんの少しだけ曲がった状態で着地をします。これは、着地の際、地面にかかる衝撃を受けるからです。少し膝を軽く曲げると、着地の際、膝自体がクッションのように働くため、足にかかる負担が少なくなります。
これが、骨盤を前傾させたり、上体を前に倒しながら走ろうとすると、着地衝撃が太もも裏側にかかります。しかし、骨盤の前傾が少なくなると、膝がほんの少し曲がった姿勢になり、衝撃がお尻、背中当たりにかかるようになります。これによって、太ももやふくらはぎの負担が少なくなるため、長時間疲れずに走り続けることができます。
このほかに、ボクシングや格闘技のキック動作であっても同様です。キックを行うときも、軸足に一度体重を乗せてキックするのではなく、軸足にはそこまで体重を乗せないようにします。少し軸足が曲がった状態でキック動作を行うと、無駄な力みなく、速く蹴りだすことができます。
実際に、私が運動指導を行っているクライアントさんは、膝を少し曲げた姿勢でプレーをさせたことで、各スポーツでパフォーマンス向上につながっています。つまり、少し膝を曲げた状態はスポーツにおいても重要であるとわかります。
つまり、膝をほんの少しだけ曲げた姿勢は、「動いている最中」でも有効です。普段立っている姿勢で、少し膝を曲げ、骨盤を立てて背骨を上方に伸ばしたとします。その後で、スポーツ動作に応用することが可能です。軽く膝を伸ばす姿勢を意識して、スポーツ動作に応用することができます。
膝を少しだけ曲げたときの注意点
ただ、ほんの少し曲げた状態にしても、立っている最中に膝に負担がかかることがあります。それは、目線が下がったときです。ようになってしまいます。例えば、目線が下がったときです。目線が下がると、肩、背中周りの筋肉が固くなってしまいます。膝を少し曲げた姿勢は骨盤が垂直に立てやすい反面、骨盤、胸部、首、頭部、どれが傾くと大きく影響が受けやすいといえます。
あるいは膝が曲げすぎてもいけません。なぜなら、ひざが曲がりすぎると、踏ん張った姿勢になってしまい膝自体に無理な負担がかかってしまいます。やはり、立位の姿勢においては、曲げすぎず伸びすぎずの「少し曲げた状態」を体で覚え、最後まで形を崩さないように意識することが大切です。
立った姿勢は、外形はピンと伸びているより、曲がっていた方が動かしやすくなります。それによって着地衝撃のときに受ける力が分散し、腰や脚全体を円滑に動かすことができます。
ダンサー、バレエの人は膝関節のゆるみが大切
世の中には、スポーツ以外に大きく体を動かす習い事があります。例えば、ダンス、バレェといったものです。こうした踊りに対する動きは肩や腕を動かすことが多いです。バレェの場合、腕を上に上げる動作があり、ダンスであっても腕を動かします。
この場合であっても、少し膝関節を曲げることは大切です。その理由は、膝関節を少し曲げることで、脚の裏側の筋肉の強い張りがなくなります。これによって、肩の筋肉の力みがとれ、腕が動かしやすくなるからです。
例えば、バレェの世界では、膝の曲げ伸ばしと同時に腕を上に上げる動作を行います。実際に私はバレェ経験者を指導したことがあり、悩んでいるのが、「腕に力が入ってしまう」といったものでした。バレェの動きを行うとわかりますが、腕を上げる動作では、つま先で立ち、胸を張るため、どうしても力がはいってしまいます。
そこで、私は腕を上げるときは、「腕や肩には何も力を入れないで下さい。それよりも腕を上げるときは膝を意識してください」と伝えます。つまり、膝が伸びることで、上半身が伸び、その勢いを利用して腕を上に放り投げるように意識させたのです。これによって、胸を張った姿勢であっても肩に負担なく腕を上げるようにできます。
以上の内容をまとめると、骨盤を立位の姿勢で骨盤を立てやすくする方法として、「膝をほんの少し曲げる」ことが挙げられます。膝を曲げることで、ピンと張りすぎた脚筋が少しゆるみ、股関節を動きやすくなります。それによって、骨盤が垂直に立ち、背骨や頭部を上方を伸ばしやすくなります。骨盤を立てることで、結果として姿勢を改善することができます。
スポーツや動いている最中であっても、「軽く膝を曲げた」姿勢は有効となります。立っている姿勢のみならず、歩いている状態やあらゆる動作に応用するようにしてください。
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