普段の生活でストレスや疲れが積み重なると、慢性疲労を抱えます。あるいは、日常生活で、座位の姿勢が多い人は、腰や肩に負担をかけて疲れてしまいます。これによって、身体にゆがみが生じると、不調や慢性的な病を抱える可能性があります。
このような事態をなくすために実践すべきことは「正しい姿勢を学ぶこと」です。人は姿勢を正し、その状態を維持することで、関節、筋肉、内臓の無駄な負担をなくすことができることがわかっています。
世の中では、姿勢に関する情報として、「背骨を真っ直ぐになっている状態」「猫背は悪い姿勢」といった部分的な内容はあります。しかし、体全体を見て、良い姿勢の状態とその取り方はあまり知られていません。もしも、普段の姿勢を変えて、体の不調を改善したいのであれば、心身に負担のない姿勢を理解する必要があります。
そこで、武道の世界では、「三重十文字」と呼ばれる姿勢の整え方があります。三重十文字とは、足踏みの線、腰の線、肩の線を平行に重ねます。そして、これらの中央を貫く脊柱を正しく垂直に保持することです。例えば、弓道の世界では、この姿勢を構築することで、上体のブレを軽減し、矢をまっすぐに放つために必要な姿勢を構築します。
そして、三重十文字の整えると、上体の筋肉に余計な負荷がかかりにくくなります。これによって、腰や肩にかかっていた負担を大きく軽減し、腰痛、肩こりの改善につながります。さらに、頭部への負担も少なくなり、慢性疲労の軽減につながります。このように、身体の不調を改善するために、「三重十文字」の姿勢を構築することは大切です。
そこで、今回は三重十文字の整え方について説明していきます。
三重十文字の姿勢構築法
まず、武道で知られる三重十文字とは、どのような姿勢でしょうか?この内容について解説します。
三重十文字
姿勢を整えるときに、上方から見て両足底―腰―両肩が一枚に重なり首筋を伸ばし、下半身を安定させるとともに上半身を伸ばす
では、武道の世界で知られる三十重文字はどのように構築するのでしょうか?以下に具体的な手法と注意点について解説していきます。
三重十文字は首の後ろを伸ばすことから始まる
まずは、「首の後ろ」を伸ばすようにします。少し、アゴを引いて首の後ろ側(項)を意識的に伸ばすようにします。次に、肩根を楽に落としましょう。すると、「肩」「腰」「足」の横ラインがそろってくる」ものと考えましょう。
首の後ろ側の筋肉を伸ばすとき、イメージとしては、頭の頂点を10センチ上方向に伸ばすようにします。すると、背中周りの緊張がほぐれることがわかります。この状態を保ったまま、「肩を楽に落とす」ようにします。これによって、胸周りの緊張が和らぎます。
すると、両肩が自分でそろえようと思わなくても自然とそろいます。このとき、首が伸びていなかったり、アゴが引けてなかったりすると、腰椎が反ったり屈んだりします。すると、腰部の筋肉に凝りが生じてしまいます。すると、動いている最中に姿勢が崩れる可能性があります。それによって、三十重文字の姿勢が崩れる可能性があります。
そのため、首を伸ばして両肩を楽に落とし、上半身の無駄な力みをとります。これによって、上半身の体重は自然と背骨の終点周り(仙骨の周り)に体重が乗ります。これにより、腰のラインが平行にそろいます。これによって、三十重文字の「肩」と「腰」の線までそろえられます。
足裏の重心の位置が決まれば三十重文字は完成する
次に足裏の重心位置を考える必要があります。たとえ、両肩や首に無駄な力みがなくても、足裏の重心の位置がずれると、腰は前後にずれる可能性があります。重心の位置や次に動作を行う動き出しを決める重要な要素です。
足裏の重心は土踏まずの前縁辺りに乗せます。次に、両肩を落とすことで足の裏に体重がピタッと乗ることを実感しましょう。このように、両肩を落とし、しっかり上半身を下半身に乗せれば、足裏がしっかり地面に着きます。
ここで、重心が前方に行き過ぎると、ふくらはぎ、太もも裏側、腰部の筋肉が張ります。反対に重心が後方にあると、腹部の筋肉が緊張します。重心が前方に行き過ぎると、腰痛にかかりやすくなり、後方にあると肩こりにかかりやすくなります。そのため、普段の姿勢において、腰や肩に負担がないように意識することは大切です。
そのため、両肩を落とし、左右均等に体重を乗せるようにしましょう。これによって、肩、腰、足が平行になるように姿勢が整います。
このように、武道の世界で心身に凝りのない姿勢として、三十重文字の姿勢があります。普段の生活で、この姿勢を意識することで、上半身の無駄な力みを取り、姿勢の崩れを防ぎます。
最も体感しやすいのは両肩を少し前に置くこと
初心者が三重十文字を整えるポイントは、両肩を気持ち前に置くことです。両肩を前に置き、上半身全体を前傾させると、ちょっとの意識で体が前方に動かしやすくなります。このときに、前に倒れそうな体を少し起こすようにすると、背中の筋肉が使われます。
少し両肩を前に置いて姿勢を整えるときは、「アゴが出すぎない」「膝関節の裏側が張りすぎない」「腰が反らない」ことを心がけましょう。先ほどあげた三つの動きは両肩を前に置いたときに陥りやすい姿勢の崩れです。これらの欠点が生じた場合、両肩の位置を前に出さないようにして、再度姿勢を整える必要があります。
最も姿勢が崩れやすい部分は「みぞおち」
三重十文字の姿勢を整えると、上半身の無駄な力みが抜けて、下半身にしっかり乗ります。よって、運動動作中に姿勢が崩れにくくなります。ただ、この姿勢を取っているときに、体の部位で動きやすいのが「みぞおち」です。
みぞおち部の崩れはあらゆる場面で生じます。例えば、胴体部の筋肉がゆるんでしまうと、猫背や反り腰になってしまい、みぞおち部が動いてしまいます。他に腕と胴体の位置関係が適切でなければ、みぞおち部が崩れてしまいます。すると、姿勢全体が変わってしまう可能性があります。
例えば、腕を振って歩く動作を考えます。腕を振るときに、力を入れて振りすぎると、肩の筋肉が動きすぎてしまいます。その結果、胴体部の筋肉が動きすぎてしまい、姿勢が崩れてしまう恐れがあります。
あるいは歩いている最中に目線が下がってしまったとします。すると、頭部が前方に動いてしまい、みぞおち部が屈んでしまいます。これは、PCやスマートフォンの画面を眺めたりするときに陥りやすい姿勢の崩れです。
上記に述べたように、姿勢はみぞおち部から崩れることがあります。胴体部自身の筋肉がゆるんでしまい、姿勢が崩れてしまうこともあります。しかし、「腕」や「目線」といった他の部分の位置関係によっても、みぞおち部が動いてしまう可能性があります。
そのため、立ったり歩いたりするときに、胴体部以外に腕や目線にも気を使うようにしましょう。腕は脇を締めるようなイメージで、肘を胴体部からあまり離さないようにしましょう。
目線はアゴを引くようにして、頭部を後ろに動かしましょう。次に目線を少し上げるようにすると、頭部が上体の上に乗り、安定します。
以下に三重十文字の姿勢を整えるときのポイントをまとめておきます。
①正面から見て、「両脚」「両腰」「両肩の線」がそれぞれ平行であること
②上の三線が背骨と垂直になっていること、
③脇正面から見て、土ふまず、腰骨、肩が縦に一直線上に並んでいること
④姿勢が崩れやすいのはみぞおちの部分
上記の内容を理解し、均整がとれた三重十文字を身につけましょう。それによって、普段の生活から、心身に負担のない姿勢を身につけることができます。