社会人になると、椅子に座ってPCの前で作業することが多いです。事務作業が長引くと、背筋が疲れてしまい、肩や腰といった部位がだるくなってしまいます。そのほかに、目が疲れることが多いです。
ずっとPCで作業をしていると、眼球周りの筋肉が働き続けます。すると、目が休まることがないため、疲労してしまいます。武道の世界では、姿勢や余計な体の力みをとるための目の使い方があり、これを生活に応用することで、目の疲れを軽減することができます。
武道の世界では、身体の余計な力みをとるための手法があります。今回は、デスクワークにおける眼の負担のなくし方を解説していきます。ここでは、長時間のPC作業で目を疲れなくする方法を解説していきます。眼の疲れに悩んでいる人は、内容を理解して実践してみるようにしてください。
文字を「入れる」のではなく、「入ってくる」ように姿勢を整える
弓道の世界で、弓を楽に負担なく引くために「眼」の使い方が非常に重要とされています。その理由は、目の動きは上半身の姿勢に大きく関わるからです。
的を狙うとき、多くの人は当てたいと思って、的を見ようとします。すると、眼に力が入ることで、頭や背中の筋肉が力み、姿勢が変わってしまいます。これにより、ねらい目が数ミリずれて、的にはずれます。そのため、目の筋肉に対する意識の持ち方は弓を引く上で非常に重要です。
ここで、この目の使い方を的ではなく、PCの画面に応用します。まず、イスに座るときは少し深めに座るようにしましょう。腰がしっかり立って上半身を真っ直ぐに整えやすいからです。次に、肩の力を抜いて、上体に無用な力をなくします。
ここで、眼球を奥に入れるような感じで少し頭を後ろに引きましょう。すると、目がリラックスさせて座ることができます。次にパソコンで文字を見ます。ここで、文字を見ようとすると、目に力が入って、上体が力んでしまいます。
少し薄めに開けるようにして「文字を見よう」ではなく、「目を少し開けていれば文字が勝手に入ってくる」と思いながら作業しましょう。すると、つまり、意識的に見るのをやめるのです。これによって目が力むことなく、PC作業をすることができます。
実際にこの意識を続けて、眼を軽く開けて、「見る意識」をなくすことで、身体の無駄な力みが消えていきます。
見るのは「眼」ではなく、「脳」が判断する
では、なぜ少し見る意識を消すだけで身体の力みは消えるのでしょうか?これは、眼と脳の関係によって説明できます。
人間の眼では、物体を見るときに、「焦点を合わせる」作業が行われます。前方50センチ前にリンゴがおいてあるときに、「リンゴがあること」を認識します。
しかし、そのあとに「あのリンゴはうまそうだ」「赤い色をしている」「50センチ程度先にある」といった情報を認識するのは「脳」が行います。つまり、眼は物体を視界に移すことしか行いません。その物体がどのような形をしていて、自分に与える影響などを思考したり認識するのは「脳」が行います。
この「物体がなにか」「物体の特徴は」「そこからわかることは」といった情報を脳から処理するときに「エネルギー」を使います。つまり、人は視界に物体が入ること自体は大きくエネルギーを消費しません。しかし、そこからその物体に対して、考えたり、感じることでエネルギーが消費されるのです。
先ほどのPCの例に置き換えてみましょう。PCの画面や文字を見ようとします。すると、文章や言葉に対して、思考や感情が入ります。たとえば、その文章の内容を考えたり、その文字を入力しようと気持ちが張ってしまいます。すると、エネルギーや力を使ってしまいます。
しかし、文字や言葉に感情をなくして、ただ眺めるようにしたらどうでしょう?文字に対して余計な考えや思考が入らないため、エネルギーを消費しません。これによって、作業中の無駄な力みやエネルギーの消費が抑えられます。
特に、現代社会は情報社会です。インターネットを開くと感情的になりやすいニュースや話題が多いです。PCを作業をしていると、芸能人や政治のニュースに一喜一憂してしまいます。これによって、脳でエネルギーを使い、結果として眼が疲れてしまいます。そのため、あくまで見る意識を薄めるように努めて、仕事を行うことは大切です。
映画で違うことを考えながら見ると眼が疲れない理由
あなたは映画を見たことはないでしょうか?映画を見ていると、ストーリーが展開されていき、感情が揺れ動きます。しかし、見ている最中に頭で違うことを考えていたらどうでしょう?おそらく「眼」で見ていたとしても、感情は動くことはありません。
これは、映画の風景を「眼」では見ているが、脳で必要以上に映画のことを考えなかったからです。つまり、PCの作業中に眼が疲れるのは、眼ではなく、作業中の心持ちに大きくかかわるのです。つまり、PCの前で作業しているときは、脳も眼をなるべくエネルギーを使わないようにすることが大切です。
弓の世界では矢を放つ前に「体のどこか一部に意識がとらわれているとき、的にとらわれているとき、その射は失敗に終わる」という言葉があります。これは、矢を放つ瞬間に体の一部が力むことで、放すときの拳がぶれてしまうことを説明しています。
普段の日常生活の場合、目から入る情報が多すぎるため、眼球周りの筋肉に力を入れることばかり強いられます。眼に力を入れることはいくらでもできます。生活で余計な力みをとるために、あらゆる意識や力を抜くように心がけることで、PC作業中の目の疲れを軽減することができます。
片目で作業をすると目の疲れが軽減する
私自身も仕事でも、プライベートでもPC作業が多いです。昔は、姿勢が悪かったですが、武道を行うようになって姿勢が大きく改善されました。その過程で「目」「耳」といった感覚器官についても学ぶ機会があり、眼球に凝りのこない座り方、意識の持ち方を勉強してきました。
その中で最も簡単で実感しやすいのが「片目でPC作業をする」ことです。片目で作業を行うと、デスクワークの作業における眼の疲れが大幅に軽減できます。
まず、眼鏡を用意します。普段眼鏡をかけていない人であれば、サングラスでも伊達眼鏡でもよいので準備しましょう。次に、黒い紙を用意して片方のレンズに貼り付けます。
このようにすると、片目だけ見える形になります。この眼鏡をかけて作業を続けるだけで問題ありません。5~10分片目眼鏡をつけたままデスクワークをしてみましょう。また、読書やテレビを見ても問題ありません。
すると、終わった後に眼鏡をはずすと驚くほどふさいでいる目が軽く、動かしやすいことがわかります。ふさぐ目を変えれば、同じ効果を望むことができます。この眼鏡をかけて2,3時間作業を続けても、ふさいでいる目が疲れることはありません。
さらに、この片目をふさいで作業をすることは身体全体にもよい効果を与えます。例えば、右眼を隠すと、体をスケート選手のように回しやすくなったり、柔軟性が高まったりします。
左右の眼によって働きが変わる
この理由は目の機能にあります。人の右眼、左眼はそれぞれ違う役割を持っています。右脳、左脳の働きが違うように、眼もお互い異なる働きをします。そして、普段両眼を開けているときは、お互いの働きが拮抗しあい、全ての力を100%出し切れていません。
これが、片目をつむることで片方の眼の機能を最大限に発揮することができます。右眼をつむると左眼の機能が最大限に発揮されて、体の動きや柔軟性が変わります。
ちなみにこの片目眼鏡をかけたまま作業をしていると、体半分が熱くなる感覚があります。この症状は片目の機能が最大に働いていることから来ています。私自身は作業しているときに、真ん中からカゲロウのようなものが見えてきます。ずっと片目で作業をしている不思議な現象に出会います。
そして、眼鏡をはずした瞬間、最初は左右の視力が違ったように見えます。それが、数秒立つととても視界がすっきりする感覚を得ることができます。長時間の仕事やPC作業をしているときには眼鏡に紙をつけて、片目だけで物を見るようにしましょう。
長時間のPC作業では、眼を酷使し、体の不調を患うときがあります。眼鏡の片目に紙をつけて片目で作業するようにしましょう。目がスッキリして、負担なくデスクワークを続けることができます。
デスクワークをしていると、目が疲れることが多いです。武道における目の使い方より、文字を見るのではなく、入ってくるような心持ちで姿勢を整えましょう。無駄な眼球周りの力みがなくなり、長時間の作業を行うことができます。