身体の緊張を緩和し、姿勢を改善する二つの目線の取り方

近年、慢性疲労、腰痛、肩こりを抱えている人が多くいます。そこで、日常生活で怪我や不調なく過ごすためには、姿勢を改善する必要があります。姿勢を改善することで、肩こり、腰痛、など身体にかかった負担を減らすことができます。

その中でも、立つ、座った状態での頭部は重要な役割を持ちます。なぜなら、頭の位置を少し変えるだけで、体のあらゆる部位の緊張を取ることができるからです。それによって、動作中に体のあらゆる部位を動かしやすくなります。

もし、体の不調や無駄な力みをなくしたいと思うのであれば、体の中でも頭部に注目し、整えることが不可欠になります。ここでは、姿勢や動きを変える頭部の位置について解説していきます。

カンペル平面とフランクフルト平面を理解する

人の頭の向きは「カンペル平面」と「フランクフルト平面」と呼ばれる二つの平面に分かれます。カンペル平面とは、顔を正面から見たときに、鼻の穴が耳の穴と一直線に揃った状態です。一方、フランクフルト平面は目線と耳の穴が横一直線に揃った状態です。

二つの平面のとり方を少し顎を引き、頸椎を肩関節にしっかり乗せた後に、構築されます。以下にカンペル平面、フランクフルト平面の特徴について解説していきます。

カンペル平面のメリット

この中で「カンペル平面」を取ると、プラス要素がいくつかあることがわかっています。一つはカンペル平面を取ると、目と胸周りの筋肉の緊張を緩和できることです

これは簡単な実験で体感できます。両腕を左右に伸ばして、お互いの掌を向けます。そして、両目を使って、左右の掌を交互に顔を動かさずに見るようにします。目線を下げた場合と上げた場合で目線を変えるスピードを比べます。

すると、目線を上げたときの方が目が動かしやすいことがわかります。これは、カンペル平面を取ることで、目を上下に動かすための筋肉がゆるむからです。

さらに、カンペル平面をとることのメリットは胸の筋肉の緊張がほぐれることです。少し目線を下げた状態と、目線を上げた状態で腕を真上に上げてみましょう。すると、目線を上げたときの方が、腕が楽に上げられることがわかります。

目線を下げた状態(フランクフルト平面)の体勢を取ると、胸の肋骨が後ろに下がります。これによって、胸鎖関節周りにある筋肉が窮屈になってしまいます。胸鎖関節は腕関節と直接つながっています。この関節の可動域の低下は、腕の動きのしにくさに直接つながります。

すると、腕が上に上げにくくなります。カンペル平面を取ると、胸鎖関節周り、眼球周りの筋肉がほぐれ、腕や眼球を動かしやすくなります。それによって、生活や運動において良い影響を与えます。

目線を上げることで得られる能力:水平感覚

スポーツにおいて、カンペル平面を取ることで、いくつか効用があります。例えば、スポーツでは、コーナーを全力で走ることがあります。バスケやサッカーでは四方八方に体の向きを変えて動くことがあります。このときに、上体の軸を保つことであらゆる方向に動いても姿勢全体が崩れにくくなります。

そのときに重要になるのが平衡感覚です。平衡感覚(水平感覚)とは、人の体が運動中や重力にたいして、傾いた状態にあるとき、察知する働きのことです。そして、頭部には身体全体の平衡感覚を司る器官がついています。もしも、頭部の安定がとれなければ、姿勢の崩れが全体に伝わってしまうため、動きが悪くなってしまいます。

そこで、目線を上げることで、どのような状態でも、体の傾きを感知しやすくなります。それによって、方向転換や切り替えの動作に無駄な動きが少なくなります。実際に、スポーツ選手では、カンペル平面を取って動作を行っている選手もいます。そして、剣道の世界では、目線少し上に上げることで、腰の上下動を少なくして動作を行うことができます。

すると、さまざまな動きに対して、余計な動きや力のロスが少なくなります。これによって、長時間、効率のよい動きを展開することができます。

フランクフルト平面のメリットを理解する

ただ、カンペル平面と対照的に、「フランクフルト平面」でもメリットがあります。具体的にはフランクフルト平面を取ると瞬間的に強い力を生み出すことができます。

大気拳の世界では、腕を大きく振り出さずに、ほとんどノーモーションの状態で相手に強い突きを打つ技があります。このときの突きの威力を出すときに、頭部の位置が重要になります。

通常パンチを出すときは、どこかでタメを作らないと強いパンチを出すことができません。下半身に力を入れたり、腰をひねったりして力をためなければ強い力でパンチ動作を行うことができません。

しかし、フランクフルト平面を取ると、少ない動きで強いパンチを生み出すことができます。少し顎を引いて、目線と耳の穴を一直線にそろえます。これによって、首の後ろの筋肉が伸ばされます。

次に両肩を落とすことで、肩から下の筋肉が締まります。これによって、腰から上の体幹部の筋肉が同時に締り、強固な姿勢を取ることができます。

さらに、アゴを引いて踵よりに重心を乗せると、下半身が不安定になります。これによって、股関節が少しの意識でゆらいで動くようになります。この大勢で少し後ろに一方の股関節引くと、同じ側の肩甲骨が引かれます。

この瞬間にアゴを引くと肩甲骨が瞬間的に前に出され、速いスピードで腕が前に出されます。結果として、パンチの威力が増し、ほぼノーモションで強いパンチを繰り出すことができます。

大気拳の世界では、体の中の筋肉を動かしてためを作らずに相手に強いパンチを出す方法があります。この技は発勁と呼ばれます。具体的には、姿勢を作ってから全身の筋肉を脱力させます。すると、上半身の重みが沈み込みます。この沈みこむ力によって、パンチを繰り出すため、腕や肩の力を使いません。すると、筋力を使うパンチより重くて威力のあるパンチを繰り出すことができます。

フランクフルト平面を取ることで、威力のあるパンチを出すことができます。このノーモーションで強い力を出すことは、他のスポーツでも応用することができます。例えば、空手の世界では、ノーモーションで相手に気配の読まれにくいパンチを出すことができます。

他に卓球の世界では、下半身の力を抜いて上半身を沈み込ませ、瞬間的に腕を振る動作に変えることができます。つまり、地面をけらずに強いボールを打ち返すことができます。

フランクフルト平面より、関節が安定する

上気したように、フランクフルト平面の姿勢を身につけると、威力のある動作を行うことができます。この理由として、あごを引く事で、首関節が安定するからです。ことにより、他に利点が存在します。それは、強固な姿勢を構築し、相手に体当たりをされてもぶれなくなることです。

首関節の安定性は首の側面についている「胸鎖乳突筋」が強く張ります。これによって、首関節のみならず、肩関節のぶれも少なくなります。このように、首関節が整えば、結果として肩を含めた上半身全体が安定した姿勢になります。

まず、腰から上の筋肉を最大限に活用して、強固な姿勢を作る準備をします。アゴを引いて、首の後ろをできるだけ伸ばします。次に少しみぞおちを前に引っ張り、胸郭を前に出します。これにより、両肩が後ろに落ち、肩甲骨の下部から背中にかけての筋肉が締まります。

この姿勢から少し腰を折るように前傾姿勢を取りましょう。少ししゃがめばバスケやサッカーでの構えに近くなります。この姿勢を取ると、前後左右から押されても崩れない姿勢が完成します。

合気道の世界で自分より大きな相手に当たり負けしない秘訣は姿勢にあります。上半身の強固な姿勢を取ることで、相手にぶつかっても姿勢が崩れることがありません。これによって、相手を突き飛ばしたり倒したりして次の技を繰り出すことができます。

日常生活で心を引き締めるには

頭部はフランクフルト平面を取って、少しみぞおちを上げて、両肩を下に落としましょう。このように、フランクフルト平面を取った後に少しみぞおちを上げると、猫背になりにくくなります。この姿勢は呼吸動作に悪い影響が少なく、慣れれば力みなく誰でもとれるようになります。

現代人は、座り・立ち姿勢で猫背が癖づいている人が多いです。猫背姿勢は胸が窮屈になり、呼吸が浅くなります。それによって、体全体の血流が滞り、さらに姿勢や動きが悪くなってしまいます。さらに、体全体の血流が悪くなると、心の状態にも影響を与えます。フランクフルト平面は現代人に背筋を真っ直ぐに癖づける姿勢の取り方と言えます。

あごを引くのではなく、目線だけを下げると不調につながる

ただ、フランクフルト平面の姿勢を構築する際に、気をつけないといけないことがあります。それは、あごを引くのではなく、目線だけを下げることです。

なぜなら、目線だけ下げて、あごが引けていない状態は首関節に大きな負担がかかった姿勢になるからです。この状態は、頭部全体の神経が圧迫し、働きが悪くなります。そのため、絶対にあごを引かず、目線だけ下げるようなことをしないでください。

これは、カンペル平面も同様です。カンペル平面も目線だけ上げて、あごが上がった姿勢では、首関節に負担がかかります。つまり、首関節によけいな負担をかけないように、あごを引いて、頭部を引くようにしてください。

あなたが日常生活で腰や肩、肘の痛みに悩まされていないでしょうか。それは、目線が下がったことによってこれらの不調を誘発している可能性があります。目線が下がり、首関節がわんきょくしたあごが上がった姿勢になると、眼球周りの筋肉、胸の筋肉の緊張を誘発します。これによって、体を動かすときにあらゆる弊害が起こります。

目線が下がり、眼球周りの筋肉が緊張すると、眼の奥の筋肉と解剖学的につながっている首の奥部、背中の筋肉も緊張します。その結果、背中、腰周りの筋肉が緊張してしまい、腰の不調を患ってしまいます。

さらに、人は目線が下がると、頭部が前に出やすくなります。頭部が前に出て、上半身の上部が猫背になっていると、上半身の重みが腰にかかりやすくなります。すると、腰にかかる負担が大きくなってしまい、痛みが生じる可能性があります。

肩や肘の痛みは腕の動きの柔軟性が低下したことで起こります。目線が下がり、鎖骨周りの筋肉の緊張により、腕を最大限に動かすことができなくなります。そのため、生活においてあらゆる体の不調が生じた場合、自身の目線を一度確認する必要があります。

まとめ

以上の内容をまとめます

・カンペル平面のメリットは眼、首の筋肉の緊張がとれる
・ フランクフルト平面のメリットは関節の安定性が高まる
・ どちらの頭部の据え方についても、目線だけ動かして、あごが抜けた状態はさける

このように、身体の不調を改善するためには、カンペル平面、フランクフルト平面の頭部の据え方を理解しましょう。実際に構築することで、腰や肩にかかった負担を軽減することができます。

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