日常生活で、体の不調を患っている人は多くいます。体自体に不調を抱えている人があれば、心的なストレスを抱えている人もいます。このような人を生活を見ると、生活習慣が乱れていることが多いです。
そして、医者や専門家に見てもらおうとすると、「生活習慣が乱れている」といった指摘をいただきます。そのため、生活習慣を改めることは重要です。「睡眠時間が少ない」「栄養が偏っている」「体を動かさない」といった内容は生活習慣を崩してしまう要因になってしまいます。
ただ、生活習慣を改めるのは非常に難しいです。世の中には生活習慣を乱してしまう要因が数多く存在するからです。その中に人間関係が含まれます。
仕事や生活で、人間関係が悪い環境では、心的ストレスが大きくなってしまいます。仕事の不安が頭から離れず、気持ちが休まらないことがあるでしょう。もし、あなたが日々のストレスにうまく対応できず、生活習慣を乱している場合は人接する際の考え方を変えてみることがひとつの手です。
そこで、武道では、人と円滑に向き合う考え方が存在します。今回は、武道で知られている人との向き合い方を学び、生活習慣を良い方向に導くための考え方と実践法を解説していきます。
武道の最終目標は人と争わないこと
古くの武術の達人の考え方や書物を読むと、行っている動きは違いますが、考え方は共通していることがわかります。その中のひとつとして、武道の最終的な目標として「人と争わないこと」が挙げられます。
このように聞くと、多くの人は疑問を持つかもしれません。なぜなら、世の中で行われている武道の多くは、人と力を争うイメージが強く、使用している道具には殺傷性があるからです。
しかし、歴史の教科書で名前が載るくらい有名な人を調べると、武術によって身につけた動きを用いて人を倒したり、行動を抑制するようなことはありませんでした。むしろ、その動きを身につけ、その上で相手をなるべく傷つけないように配慮していたことが多いです。
例えば、徳川家康は亡くなるまで弓を引くことを愛した弓道家です。江戸時代、戦陣で矢を使うときには、先端に矢じりと呼ばれる鉄の塊を詰めて使用していました。その理由は、相手の体に矢に刺さり、抜いたときに矢じりが体内に残るからです。これによって、相手を後遺症で苦しめることができます。このような矢の使い方を「矢がら落とし」と呼ばれます。
しかし、徳川軍は自軍で矢を用いるとき、手下に矢じりをつけさせませんでした。この理由を徳川家康は「敵に残酷な思いをさせないため」と説明しています。当時、非人道的な争いが多い中、このような考え方は稀有な考え方と捉えられいました。そのため、徳川家康は優れた人格者であったと示唆されます。
武道・武術の最大の目標は、「人と争わないこと」です。人と真正面でぶつかりあって戦っていては、争いがどんどん大きくなってしまい、結果として手の施しようのないくらい問題がこじれてしまいます。そのため、このような事態をならないように、個人が生活の中できちんとした考え方を身につけていく必要があります。
日常生活で自分と相手との力の対立を避ける考え方
職場に生活の中で、自分と性格が合わない人はたくさんいます。場合によっては、その人とチームを組んで、仕事をしないといけません。そして、そういった人にストレスを負わされたり、嫌な気分にさせられる可能性が多いにあります。それによって、ストレスがたまってしまい、生活習慣を乱してしまいます。
その場合、その人と真正面にバチバチと向かい合うと、余計にストレスがたまってしまいます。このように、ぶつかり合うと悪い方向に向かってしまいます。そこで、悪い方向に行かないよういあなた自身が考えていく必要があります。その中の一つの方法として、「力の方向を変える」という考え方があります。
武道の世界では、少し力をかける方向や意識を変えると、相手を強く押せたり、投げ倒すことができます。弓道の世界では、弓の押す方向を少し変えるだけで、今まで以上に楽に押せて、弓が楽に引くことができます。このように、人の体には少し力の方向に変えるだけで、今までより楽にあらゆる動作が行えることがあります。
これは、人と向きあうときも同じです。つまり、相手が意見や指摘をしてきた時に、少しあなたが相手の話を受け止め方を変えてみるのです。相手の話を聞くときに、少し考え方を変えてみましょう。
相手が意見を言ってきたときに心を平穏に保つ体使い
例えば、ある人があなたに「あなたの仕事のやり方は●●で意味がない、もっとこうした方が良い」と駄目だしをしてきたとします。このとき、あなたはどのように相手と接するでしょうか。
もし、あなたがその内容を真に受けて、意見を言い返してしまったら、相手との関係がこじれてしまいます。つまり、相手の意見に少しでも合わせた瞬間悪い方向に行ってしまいます。その結果、あなたの体にストレスが溜まってしまいます。
それよりも、相手の意見や威圧的な雰囲気に対して、真正面から対立しないように注力を注ぎましょう。
まず、相手に意見を言われたり、嫌な気分にさせられたら、多くの人は頭に血が上ります。そこで、上に上がってしまった血液を上に上げたままではなく、下に落とすように意識しましょう。
そのためには、「目線」と「お腹」が大切です。まず、相手の目ではなく「口」や「顎」といった、顔周辺を見ます。相手の目を見てしまうといろいろな感情が湧き出てしまうため、少し目線を下げるようにしましょう。次に、お腹に手を当てて、少しおなかをへこましてみましょう。これにより、お腹周りの筋肉が動き、「お腹」が意識されます。
このように、相手が意見を言ってきた瞬間、少し目線を下げて、そらすようにします。そして、話している最中はお腹に手を当てて、その部分に力をかけるようにしましょう。それによって、相手が意見を言ってきたときのあなたの心の状態に余裕ができることが実感できるはずです。
私は、実際に工事現場で働いているとき、この構えを実践していました。工事現場は感情的になる人が多く、理不尽な要求や叱責が数多くあります。この場合、若手社員は逆うことはできず、ストレスが溜まっていることは多くあります。
このような叱責が来たときに、私は「どうすれば心を落ち着けることができるかな」と怒られている最中に考えていました。そうして、いろんなことを行って、最終的に行きついたのが「目線を変えること」と「お腹を触る」ことでした。
世の中には、どうしてもこの人と生理的に合わないという人はいます。私の場合、いつも決まって理不尽な怒りをぶつけてくる現場の人(Aさん)がいました。その人とは、入社当時から性格が合わず、Aさんが出勤すると聞くと、体じゅうに寒気がし、吐き気をもよおすくらいでした。
そこで、Aさんと会話するときは決まって目線やおなかといった部位を意識していました。そうして根気よくその人と接する機会が多くなりにつれて、相手のことも余裕を持ってみれるようになりました。そうしていくうちに、趣味の話をするようになり、前より接するときのストレスが変わっていきました。
最終的に、私が転勤のため、その工場から離れることになりました。そのときに、一番感謝の言葉を伝えてくれたのはAさんでした。
このときばかりは、人は少し考え方を変えれば、面倒くさい人間関係も紐解くことができるのだなと実感しました。私の場合、人と向き合っているときの体の意識を変えることで、相手のことを客観的に見ることができました。
もし、あなたが人間関係で悩んでいた場合、嫌な相手と接するときに何を考えていますか?おそらく相手の「発言」「言葉使い」「言い方」ばかり頭の中に詰まっているのではないでしょうか。その場合、あなたの頭の中を「目線を変えること」「お腹に手を当てること」に意識を変えてみれはいかがでしょうか。
もし、相手の言葉にとらわれてしまうと、相手と真正面に向き合うことになり、余計に問題がこじれてしまいます。そこで、力の向ける方向をあなたの体に向けましょう。それによって、相手と接するときに余裕が生まれ、向き合い方が変わります。その結果、生活習慣を乱す人間関係の問題を解消することができます。