仕事を続け、年齢を重ねると身体に不調を持ちます。現代、仕事の頑張りすぎによって、疲労を抱える方は多くいます。また、いくら寝ても疲れがとれず、また体力が落ちていることに悩んでいる人もいます。
こうした人は、慢性疲労の疑いがもたれます。慢性疲労の原因は身体の内部にある「副腎」が疲労することで起こります。副腎は仕事や人間関係で生じるストレスに対して対抗するホルモン(カテコラミン)を生産する場所です。しかし、ストレス多過になると副腎は疲弊してしまい、ホルモンの放出量が少なくなります。
すると、人体にあるヒスタミンが過剰に放出される体質になってしまいます。このヒスタミンが過剰に放出されることで、体内に炎症反応が起きてしまいます。そのため、副腎の機能を整え、ヒスタミン反応を抑えることを考えなければいけません。
ただ、武道の観点から、筋肉とは違った部分に目を向けることで、副腎機能を回復させることができます。具体的には、皮膚に刺激を与えることで、過剰なヒスタミン反応をおさえることができます。これによって、身体にかかりすぎる疲労感を軽減できます。
では、どのようにすれば、ヒスタミン反応を軽減できるのでしょうか?ここでは、その具体的手法について解説していきます。
ヒスタミン反応をおさえる神経指圧
ヒスタミンとは、体内にある脳からの命令を伝達する物質です。皮膚や胃、脳などに存在しており、毒素や抗原が入ることで、抗原部に多く集まります。
ヒスタミン自身は毒素や抗原がいることを知らせる物質です。したがって、その部位を炎症を起こさせて、白血球、マクロファージといった毒素を撃退する細胞を患部に呼び寄せます。この際には、炎症部に速くこれらの細胞を届けるために、血圧を高めたりする作用も持っています。この反応を「ヒスタミン反応」といいます。
しかし、ストレスによる痛みが生じると、このヒスタミン反応が過剰に置きすぎてしまいます。そのため、炎症が大きくなってしまい、痛みや疲れが生じます。しかし、この反応を過敏にならないように身体をケアできる手法があります。それが「神経指圧」です。
神経指圧とは
筋肉や内臓は一人で勝手に動くことはありません。まず、筋肉を動くための最初の反応として、脳から神経を介して命令が届きます。この命令や指令が神経を介し、筋肉に届くことで、筋肉は動きます。
例えば、腕や脚を動かすための筋肉はその周りにとりまく神経から命令や指令が届き、筋肉が収縮します。心臓や内臓のような常に動いている筋肉は背骨にある自律神経を介して、命令や指令が届いています。
神経は、日常生活においてのストレス、姿勢の崩れによる骨格のズレによって、圧迫されます。もし、神経が圧迫されると、脳からの指令や栄養分がそれにつながる筋肉や内臓に届くことがありません。それによって、筋肉や器官に悪影響を与えます。
そこで、神経を指圧するようにします。具体的には、皮膚の上から、指圧して、筋肉の奥にある神経に圧をかけるのです。圧力をかけると、血流の低下、つまりを起こしていた神経が流れるようになります。その結果、機能が低下していた内臓や筋肉を改善できるのです。
例えば、目の調子が悪い場合、眼につながる神経(首の後ろ付近、具体的には頸椎3番目)を指や道具で指圧します。胃の消化が悪い場合は、胃袋につながる神経(胸の後ろ側、具体的には胸椎5番目)を指圧します。これによって、神経のつまりが解消されて、栄養分や指令が行き届くようになります。これによって、
ちなみに、神経の概念は中医学でも同様の考え方を取り入れます。中医学では、経絡と呼ばれ、血管の詰まりが起こりやすい箇所を「ツボ」を称して解説しています。
なぜ、中耳炎は片耳にしか起こらないのか
人には、頸椎と呼ばれる首の骨があります。首の骨には、眼や耳につながる神経があります。7つある頸椎の中で、3番目に眼、4番目に耳につながる神経があります。
そして、頸椎は、左に傾けたり、右に傾けるとズレが起こります。つまり、頸椎のズレは2通りのズレ方があります。もしも、ズレが起こると、ずれた側の神経に圧迫が起こり、それにつながる筋肉や器官の機能低下を起こします。
例えば、なぜ中耳炎は片耳にしか起きないのでしょうか?右耳に炎症が起きた場合は右側に頸椎4番にずれが起きています。左耳に炎症が起きた場合は左側に頸椎4番にずれが起きています。つまり、中耳炎は頸椎4番がどちらか一方にずれたことによって起こる病気です。そのため、片側にしか起きません。
神経を指圧すると、ヒスタミン反応を抑えることができる
そして、この神経指圧を行うことで、あるメリットが起こります。それは、ヒスタミン反応を抑えることができるのです。
例えば、神経は身体のいかなる場所に張り巡らされています。背骨には大きな神経が通り、そこから、腕、脚、脇下、などあらゆるところを通っています。人差し指と親指の間にも神経があります。こうした、神経が通っているところを指や突起状の道具を使って刺激して上げます。
試しに、人差し指と親指の間を押してみましょう。すると、痛くて気持ちいい刺激があることがわかります。この他にも、背骨、首、お尻にある「痛気持ちいい部位」を探し、指圧してみましょう。すると、指圧すればするほど心が落ち着き、体が楽になる感じがわかります。
このいた気持ちいい刺激を日々積み重ねるようにします。すると、過敏になっていたヒスタミン反応をおさえ、結果として、慢性疲労の改善へ向かいます。
なぜなら、皮膚から神経を指圧してあげることで、「自律神経」が安定するからです。
人には、各内臓の動きや心拍数を調節する自律神経が存在します。自律神経は背骨付近に存在しており、各内臓の働きを制御します。ただ、日常生活における過度なストレスがかかることで、ストレス耐性ホルモンを放出する腎臓、栄養分を作りだす肝臓が疲弊します。
すると、各内臓の働きが不安定になるため、自律神経の働きが悪くなります。そこで、自律神経の働きを安定化させる工夫として皮膚に指圧をかけて刺激を与えるのです。皮膚の表層には神経があります。皮膚を押してあげることで、神経に指圧することができます。そうして、その神経につながる内臓の働きも安定させることができます。
実際に、私はクライアントに健康、運動指導をしていますが、神経指圧法をお伝えし、実践してもらいます。すると、ほとんどの人が頭痛、腰痛、肩凝り、疲労感といった悩まされた症状を自身で改善されています。このような体験から、疲れや症状を改善するのは、神経を指圧し、自律神経を安定させることが大切であると実感しました。
皮膚を刺激してあげることで、神経が指圧されます。これによって、自律神経の働きが安定化し、結果として、内臓の負担を軽減できます。胃、腎臓、肝臓、膵臓といった、現代人が仕事や生活の上で大切な臓器のケアになりうるので、実践するようにしましょう。
赤ちゃんが生まれたときに抱く理由
では、皮膚の刺激によって、どのくらい人の心は安定するのでしょうか?それは、赤ちゃんによる、皮膚刺激に関わる実験によって理解できます。
昔、13世紀のローマ帝国である実験が行われました。生まれたばかりの赤ちゃんに皮膚刺激を与えないで成長させると、その子がどのように成長するのかを観察したものです。新生児を集め、抱っこすることを禁止、ミルクを飲ますときは寝かしたまま飲まし、赤ちゃんを起こす際は赤ちゃんに首輪をつけて、釘で引っ掛けて起こすように指示されます。
このように、育てられた赤ちゃんはどのように成長したのでしょう?その結果は、様々な症状にかかりながら、死んでしまいました。このような実験から次のようなことがわかりました。
まず、赤ちゃんは不安になったり、痛いところがあると、母親からの皮膚刺激を求めます。抱っこをお願いしたり、擦ってもらうように求めたりして、皮膚に触れることを望みます。なぜなら、赤ちゃんは皮膚に触れることで精神が安定することがわかっているからです。
母親から抱かれないまま育った赤ん坊は、精神が安定しないことが多く、母親が裸の状態で抱っこする療法(カンガルー療法)があるほどです。つまり、赤ん坊を含め、人の皮膚には、精神を安定させるために必要な部位であることがわかります。
現代の疲労の大きな原因として、副腎が働きすぎ、ヒスタミン反応が過剰に起こりすぎ、緊張のしすぎで血管が細くなりすぎなどが挙げられます。これらは全て、精神が不安定だからこそ起こりえます。そのため、皮膚を刺激し、心身を安定させることが重要となってきます。
神経指圧を行うには
では、どのようにすれば、神経を指圧し、自律神経を安定させることができるのでしょう?ここでは、神経指圧の適切な実践法について解説していきます。
ここでは、具体的に、「脇下」「お尻」「太もも・膝下の側面」「仙腸関節」「首」に焦点を当てて神経指圧法を解説します。それぞれの部位を刺激してあげることで、「皮膚刺激によって、自律神経が安定する」「各部位の神経がゆるまり、身体の機能が改善される」といった効果が期待されます。以下に詳細を記します。
準備するもの
指圧するもの(丸太、低反発のボール、テニスボール、のびーるストレッチなど)
脇下の神経指圧
脇下には、呼吸中枢に刺激を与えます。横向きに寝ます。地面に道具を置いて脇下に当てます。これによって、脇下周りの神経が指圧されます。少し体をゆすると、神経に当たり、刺激されます。
脇下周りを神経指圧することで、呼吸運動が改善されます。脇下周りの神経を刺激し、血流を改善することで、肋間神経などの呼吸機能に良い影響を与えます。
お尻の神経指圧
お尻を触ってみると、くぼんでいる箇所があります。くぼんでいる箇所に道具を地面に置いて押し当てます。すると、痛くて気持ちいい箇所があります。あるいは、腰骨周りにも、いた気持ちいいポイントがあります。
お尻には梨状筋と呼ばれる筋肉があり、そのそばに神経が通っています。この部位が圧迫やつまりを起こすと、下半身の血流低下につながります。その結果として、自律神経にも悪い影響を与えます。お尻周りには、自律神経を安定させることができるため、お尻周りを指圧するようにしましょう。
太もも、ふくらはぎ側面の神経指圧
次に、太もも、ふくらはぎの側面にも神経が通っています。下半身の神経の中で血流が滞りやすい部位であるため、指圧するようにしましょう。女性、男性含め、O脚に悩んでいる人は多くいます。O脚に悩んでいる人は、太もも側面にある腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)に関係する神経が詰まりを起こしている可能性があります。
そのため、横向きに寝て、床に道具を置いて太ももの側面に当てます。この位置で、体をゆすることで、太もも側面の筋肉や神経をゆるめることができます。
仙腸関節の神経指圧
人には、仙腸関節と呼ばれる股関節と背骨をつなぐ神経があります。場所は、お尻の割れ目から、左右ともに斜め45度の方向に仮想線を引き、ベルトのライン(腰骨のライン)で三角形を作ります。この三角形(下図参照)の線上に仙腸関節があります。この部位を指圧して上げることで、脳から脊髄を通じて流れる「脳脊髄液」の循環が促進されます。
脳脊髄液は体の筋肉を動かす際、神経を介した命令や伝達に必要となります。仙腸関節を指圧してあげることで、脳脊髄液の循環が促進するため、筋肉、内臓の機能改善が期待できます。
首関節の神経指圧
首、頭部には、「脳脊髄神経」「自律神経」といった生命活動に重要な神経が通っています。普段の姿勢の崩れ、日常生活でのストレスによって、頸椎周りの神経に詰まりが生じます。すると、眼、耳といった器官だけでなく、筋肉や内臓の機能低下にもつながっていきます。
そこで、首関節周りの神経も指圧し、つまりを取りましょう。人によっては、「首の自己指圧を行うことで心が安定しした」「落ち着くようになった」という人もいます。気持ちの安静のために、首の自己指圧を行うことは必要といえます。