年齢を重ね、だるさや疲労感といった不調の主な原因として、栄養摂取の仕方にあります。
年を重ねると、栄養分を分解する酵素を出す器官や内臓の機能が低下していきます。それは、人間関係や仕事による外的なストレスが大きくなるからです。そこで、具体的に栄養素を変えるために「油」の摂取を変えることが大切です。
油には、調理するときに使う食用油も油です。あるいは、動物や魚にも油が含まれています。これらの油はどれも組成が異なります。では、何を摂取すれば良いのでしょうか?それは、自然治癒力を高める観点で考えるとわかりやすいです。
自然治癒力とは、自分で身体の炎症があることを確認でき、また炎症を治せる状態にする力です。そのためには、2種類の油が必要であることがわかっています。もし、身体のだるさや不調に悩まされているのであれば、普段の食事で油を見直すことは非常に大切となります。
そこで、今回は二種類の油について解説していきます。
身体の不調を改善するオメガ3、6の油
通常、私たちの体の炎症を抑える物質は「コルチゾール」と呼ばれる物質です。これは、腎臓の上についている副腎から生産されるホルモンです。しかし、近年では、「オメガ3」「オメガ6」と呼ばれる組成の異なる油が炎症作用を鎮静化させるために重要であることがわかっています。
「オメガ3系」の脂肪酸の具体例は、亜麻仁油、エゴマ油、シソ油、魚油などです。オメガ3の脂肪酸の代表として、アルファーリノレン酸であり、炎症を抑える働きがあります。
一方、「オメガ6系」の脂肪酸の具体例は、ベニバナ油、コーン油、大豆油などです。オメガ6系の脂肪酸の代表は、リノール酸であり、生体内では、炎症を促進させる働きがあります。リノール酸には、コレステロールを下げる作用があるため、サラダ油、ドレッシング油など、様々な加工食品などに使用されています。
もし、あなたが身体に与える炎症を自分で治せる身体を目指すのであれば、これらの油をバランス良く摂取する必要があります。具体的には、「1:1」に摂るようにします。つまり、炎症を抑える物質と促進する物質を均一に摂るようにします。
炎症を抑えるメカニズム
では、人が炎症をおさえるメカニズムについて詳しく解説していきます。
人の炎症作用をもたらす物質の出発点は「アラキドン酸」から始まります。アラキドン酸がシクロオキゲナーゼ(COX)が反応し、プロスタグランジン(PG)、トロンボキサン(TX)、ロイコトリエン(LT)と呼ばれる三つの物質を産生されます。こうした物質は痛みや腫れ、かゆみの原因となります。
そして、生体内のアラキドン酸はリノール酸から作られます。リノール酸は、脱飽和酵素と反応して、アラキドン酸に合成されます。そして、オメガ3系の脂肪酸であるアルファーリノレン酸は、脱飽和酵素と反応して、「DHA」「EPA」が作られます。
つまり、オメガ6系とオメガ3系がそれぞれの物質を作るために同じ酵素が使われます。もし、オメガ3系のの摂取量が増えれば、「DHA」「EPA」が作られる酵素量が多くなります。すると、アラキドン酸の作られる量が少なくなるため、結果として、炎症作用を抑えることができます。
自然治癒力を高めるためには、炎症を促進する物質を減らさなければいけません。そして、オメガ3系の脂肪酸は炎症を促進する物質を下げる方向に寄与します。
なぜ、比率は1:1なのか?
ただ、上記の内容を理解した人は、一つ疑問に思うかもしれません。それは、「炎症を治すのであればオメガ3(炎症を抑える)」だけを摂取するのが良いのでは?」と考えるかもしれませn。
ただ、自分の体を治癒力を高めるためには、炎症を促進する物質も必要です。なぜなら、不調や痛みの改善に必要なことは、きちんと炎症部があることを脳に伝えることだからです。
例えば、あなたが蚊に指されたとします。蚊に刺されると炎症を促進する物質が集まり、炎症を起こします。この炎症が起こることで、炎症を抑える物質が患部に集まります。この反応が適切に進むことで、自然治癒が完了します。
もし、炎症を促進する物質が多くなると、どうなるでしょうか?傷や毒素が入った際に、炎症を促進する作用が過剰が起きすぎてしまいます。あるいは、炎症を促進する物質が少なくなりすぎると、逆に毒素が入った際に、炎症を鎮静する反応が起きません。そのため、ある程度は炎症を促進する物質と抑制する物質が必要といえます。
オメガ3系、オメガ6系を具体的に摂取するには
では、オメガ3系、6系を具体的に摂取するには、どのようにすれば良いでしょうか?以下に具体例を示します。
オメガ3系……(亜麻仁油、シソ油、魚油、EPA,DHA)
オメガ6系……(ベニバナ油、コーン油、大豆油)
二つの油の内、オメガ6系は過剰摂取傾向にあります。なぜなら、オメガ6系は食用油で多く使われるからです。食用油の材料とされる物質は大豆、とうもろこしなどが含まれています。このほかに、マヨネーズやマーガリンには多くのオメガ6系の油がふくまれています。
そのため、オメガ3系は積極的に摂取し、オメガ6系の摂取は控えるようにしましょう。そうして、比率が1:1になるように摂取すれば、身体の治癒力を養うことができます。
なお、オメガ3系は、EPA,DHAから摂取するのがオススメです。EPA,DHAは魚の油に含まれているものです。特に、EPAが多く含まれている魚はマイワシ、サバ、ブリ、さんまなどがあります。こうした食品の摂取を心がけ、栄養バランスを整えるようにしましょう。
油の吸収を良くするために必要なこと
ただ、2種類の油を摂取したとしても、実際に体内に吸収されなければ、身体に活かされることはありません。そのため、摂取した栄養素は必ず身体で吸収できるようにしなければいけません。
油は吸収するために必要なことは「胃の運動機能を高めること」と「胆汁の分泌機能を高めること」です。そして、胆汁の分泌機能を高めるためには、胆汁の大部分は胆汁酸でできており、胆汁酸の原材料は「コレステロール」です。コレステロールが低いばあい 、油が吸収しにくい体質になっているので、積極的に摂るようにします。
ただ、日本では、「コレステロールは身体に悪い」と思い込んでいる人は多いです。コレステロールの摂取しすぎると、動脈硬化、心筋梗塞のリスクから、コレステロールのとりすぎに注意している人もいます。
ただ、コレステロールは食物由来から、20%、残り80%は肝臓から作られます。そして、肝臓は食物から作られるコレステロールが増えると、肝臓で合成される量を調節しています。つまり、体内でコレステロールの摂取し過ぎで血液で溜まるということはなく、安心して摂取できます。
以上の内容を理解することで、自然治癒を高めるために必要な栄養素として油の摂取が欠かせません。油の摂取はオメガ3系、6系を1対1の比率で摂取し、オメガ6系の比率が高くならないように気をつけます。適切な栄養を摂取することで、慢性疲労や身体の不調改善に必須な自然治癒を高めるようにしてください。