太ももの内側の筋肉を鍛えすぎると腰痛になる

腰痛になると、日常生活で支障をきたし、ひどい場合には歩けなくなります。こういった事態を解消するために、腰痛予防の体操や筋トレを行う必要があります。

ただ体の筋肉の方でこの部位を鍛えると腰痛になるという筋肉があります。それは、「内転筋(ないてんきん)」です。内転筋は太ももの内側についており、太ももを内側に旋回させる役割があります。

この筋肉は、健康情報誌やスポーツの書籍を見ると、多く取り上げられる筋肉です。しかし、解剖学の観点から考えると、この筋肉を鍛えるメリットはありません。むしろ、この筋肉を鍛えると、姿勢全体からみる骨格構造が崩れやすくなり、腰痛が癖づいてしまう危険があります。

それでは、なぜ内転筋を鍛えると、腰痛が癖づいてしまうのでしょうか?今回はその理由について解説していきます。

内転筋を鍛えると前傾姿勢が癖づく

内転筋は膝の内側から、恥骨(ちこつ、太ももの付け根付近にある)にかけて生えている筋肉です。この筋肉はランニングで走ったり、野球でスイング動作を行うときに活用されます。そのため、スポーツの世界では、この筋肉の重要性をしばしば説明されます。

内転筋がつねに柔軟であり、活用できるのであれば何も問題ありません。しかし、この筋肉を鍛えてしまうと、普段の骨盤の向きが変わり、怪我につながる可能性があります。

なぜなら、内転筋を鍛えると、前傾姿勢になるからです。

内転筋を筋トレや器具を用いてトレーニングをすることで、筋肉が肥大、もしくは硬くなります。これによって、太ももが内側に旋回します。これによって、骨盤が前に傾き、上部の腰部の背骨(腰椎)が前方に滑ります。これによって、背筋が固くなってしまい腰痛を患います。

ただ、世の中の健康情報やスポーツ書籍を見ると、内側の筋肉を鍛える重要性が記されています。例えば、女性で太ももを痩せたいのであれば、「内転筋を鍛えましょう」とお話されます。スポーツの世界では、内転筋は鍛えないとすぐに衰えて、太ももの外側の筋肉ばかり鍛えましょう」といいます。

ただ、このような言葉を真に受けて、他の筋肉をおろそかにして内転筋のトレーニングに集中すると前傾姿勢が癖づきます。人の体は、骨盤が前傾すると、背筋が固くなるようにできています。そして、この状態が癖づくと腰部に大きく負担がかかっています。

さらに、多くの人たちは、内転筋に負荷をかけた歩き方や内転筋の張った立ち方をしてしまっています。歩くときや立っているときに自然と内転筋が使われていればいいのにかかわらず、変な歩き方や立った姿勢を覚えてしまい、内転筋に負荷をかけています。このような歩き方を変えなければ、腰に負担がかかる状態から脱却できず、結果として腰に負担がかかります。

例えば、あなたは立っているときにふくらはぎや太ももの裏側が張りやすい傾向がありますか?これは、立った姿勢のときに、足裏の重心が前方にかかりすぎてしまい、内転筋が張り、太ももの裏側の筋肉に負担がかかるからです。この姿勢を無意識に行っていると、内転筋が収縮して固くなって姿勢が癖づきやすくなります。

実際に当サイトのセミナーでは、サッカーや陸上など走る競技を専門とする方が来られます。そうした方に体の症状を聞くと、腰が痛いとお話されます。そのような人に、内転筋の硬さを確認すると、ほぼ全員の方の内転筋が固くなっていました。

そうした方に、内転筋に負荷をかけない立ち方、走り方、筋肉をゆるめる手法などを伝えて、現在では、腰の痛みに悩まされず、快適にプレーをされています。さらに、内転筋に負荷をかけない歩き方や立ち方を実践されたことで、ふくらはぎや太もも裏側の痛みも解消されたという報告もありました。

普段立っている姿勢や歩き方において、内転筋だけを鍛えると、上部についている骨盤に影響を与えます。当然ながら、内転筋に必要以上に負担をかけていると、さらに腰痛のリスクを高めます。こうした状況に陥らないために、普段の歩き方や座り方を見直すようにしてください。

内転筋に頼らないようにするためには

では、内転筋に必要以上に頼らないように生活するためにはどのようにすれば良いでしょうか。それは、最初に内転筋をゆるめることと、立つときや歩くときでの自分の意識を変えることです。

最初に内転筋をゆるめる一つの手法として、筋肉を伸ばすことが挙げられます。例えば、両足を自分の型幅より、広く構え、腰を落とします。この姿勢を「腰割り」とも呼ばれます。この姿勢から、両膝に手を当てて、左右に広げてあげることで、内転筋がストレッチされます。

次に歩き方や立ち方です。歩いているとき、立っているときに、なるべく太ももの負担をなくすために、「目線が下がらない」ことを意識してください。理想は4メートル先前方ですが、あまりそうした内容にとらわれず、普段歩いているときや立っているときに目線は下がりすぎないように意識しましょう。

もしも歩き動作の際に、目線が下がってしまうと、頭部が前方に行きすぎてしまって上体も前屈み気味になります
。これによって、足裏がつま先から地面に速くつきすぎるため、地面を「蹴ろう」という運動が起こります。この蹴る運動によって、太ももの内側の筋肉が張りすぎてしまい、結果として背筋に負荷がかかってしまいます。

ただ、このような姿勢をとったとしても、歩いている最中にアゴが上がりすぎてしまったり、腰が反りやすいといった症状が出始めます。その場合、歩き方や姿勢に詳しいトレーナーに教えを受けて、適切な歩き方を整えた方が覚えるのが良いです。ただ、大部分の方は、歩くときに頭部が前方に出すぎることがあるため、この癖を直すようにしてください。

あらゆる腰痛の原因の一つとして、「内転筋の収縮」が挙げられます。内転筋が縮むと骨盤が前傾し、背筋が必要以上に力みます。このように、腰に負担をかけた歩き方や立ち方を改善し、腰痛改善につなげていきましょう。

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